【イグレシアニクリストとは?】クリスマスを祝わないフィリピンのキリスト教

フィリピンはアジアでは数少ないクリスチャンの国です。

国民の8割がカトリック。その他の宗派も含めれば9割以上がキリスト教徒であると言われています。

当然クリスマスともなれば国民総出で祝う一大イベント。1年で最も盛り上がる大切な日です。

今回はそんなフィリピンに存在するある変わった宗教をご紹介します。

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フィリピン発祥の宗教『イグレシア・二・クリスト』とは?

『イグレシア・二・クリスト』はフィリピン発祥のキリスト教の一派です。

創始者はフィリピン人であるフェリックス・マナロ。

イグレシアの正式な創設日が第一次世界大戦の勃発と同日であることから、フェリックス・マナロが黙示録に予言された「終末に東方から現れる天使」であると主張しています。

フェリックス・マナロの死後は息子であるエラーノ・マナロが、そして現在は創始者の孫であるエドゥアルド・マナロが3代目教主を務めています。

1914年に創設された新興の宗教ですが急速に信徒の数を増やしており、フィリピンの全人口の3%、およそ300万人が所属すると言われています。

キリスト教なのにクリスマスを祝わないなど、一般的なキリスト教とは異なる一風変わった教義と戒律を持っています。

イグレシア・ニ・クリストの教義と厳しい戒律

イグレシアニクリストにはユニークな教義と厳しい戒律があり、この戒律を破ると場合によっては破門となります。

以下にいくつかをご紹介します。

クリスマスを祝わない

イグレシアニクリストではクリスマスを祝いません。

理由は「聖書に書いていないから」です。

イグレシアでは聖書の記述を何より重要視します。

キリストの誕生日が12月25日であるというのは後世の人間が勝手に決めたことなので、自分たちがそれに従ってクリスマスを祝う理由はないというわけです。

もちろん、後世の教会によって決められた聖人を敬う理由もないのでバレンタインも祝いませんし、ドゥルイド教が起源であるハロウィーンも祝いません。

フィリピンの会社ではクリスマスやハロウィーンを祝うパーティを盛大に催すのが一般的ですが、大半のイグレシア教徒は欠席します。

週2回の礼拝

イグレシアニクリストでは毎週木曜日と日曜日に礼拝があり、全ての教徒は毎回必ずこの礼拝に参加しなければいけません。

中には木曜日や日曜日にはどうしても参加できないという信徒もいるため、支部によっては水曜日と土曜日にも礼拝を行なっています。

教会内には自分の名前を書いたネームタグがあり、礼拝時にはこのタグを裏返すことで参加を証明します。

礼拝を休むと、教会の係員が後日家まで訪ねてきて何故参加しなかったのかを聞かれます。

礼拝の時間は教会の支部によって異なりますが、早朝と夜の2回行なっているので仕事をしている教徒でもどちらかには参加できす。

もちろん早出や残業を理由に休むこともできないため、早朝の礼拝に参加しなかった信徒に残業を頼めば100%断られます。

礼拝をサボり過ぎれば破門となります。

異なる宗教の者と交際・結婚してはならない

イグレシアニクリストの信徒は、イグレシアニクリストの信徒と結婚しなければなりません。

たとえ同じクリスチャンでも、イグレシアニクリストでなければ受け入れられません。

これを破って異教徒の者と結婚すれば一発で破門です。

これはイグレシアの信徒数拡大に大きく貢献しています。

このような戒律を設けては恋人のためにイグレシアをやめる信徒や破門になる信徒が大量に出てくるのではないかと思われるかもしれませんが、イグレシア信徒の多くは多宗派の人たちと比べて狂信的な面があります。

恋人のために宗教を諦めるという人は少数派で、むしろ何としても相手を説得しイグレシアに引き入れようとします。

そして、多くの場合それに失敗すれば恋人より宗教を取ります。

以前はイグレシアに改宗するのはそれほど難しくはなかったのですが、婚姻目的の偽の改宗者を弾くため最近はかなり厳しくなり、半年ぐらいかけて教義を教え込まれた後に試験をクリアすることでようやく改宗できます。

偶像崇拝の禁止

イグレシアでは偶像崇拝を禁止しています。

マリア像やキリスト像のみならず、十字架を掲げることもありません。

これも聖書の記述によって禁じられている行為だからです。

酒・煙草・賭博を嗜んではならない

イグレシアニクリストでは酒・煙草・賭博のような享楽的な娯楽は禁止されています。

ただ、これはあまり厳密には守られていないようです。

もちろん大っぴらにこれらをやっていると公言する信徒はいませんが、実際それらに手を出している人たちを私は何度も見てきました。

イグレシア教徒と言えども人間というわけです。

労働組合に加入してはならない

イグレシアニクリストの教徒は労働組合に加入してはいけません。

これをもって彼らは「イグレシアは会社に対して過剰な要求をしないので、多くの会社はイグレシアを雇うことに好意的だ」といいます。

しかし、管理者の立場としては残業や早出を嫌がりシフトに融通の効かないイグレシアは扱いにくいという側面もあります。

血を口にしてはならない

フィリピンにはディヌグアンという豚の血を使った料理があります。

しかし、イグレシアニクリストではユダヤ教同様、血は生命であるとの教えからそれを口にすることを禁じています。

ひき肉に残った血を嫌って、調理前に真っ白になるまで洗ったりします。

収入の1割を教会に寄付

イグレシアニクリストでは収入の1割を教会に寄付することを義務付けられています。

毎週礼拝時に寄付をし、それとは別に年2回あるサンクスギビングの時にも多額の献金を要求されます。

正確に言えば「要求」されるというよりは教徒が「自主的に」納めるように教育されているわけですが、この多額の献金を元にイグレシアは各地に教会を建てています。

フィリピン中至る所に建てられた教会の豪華さを見れば、その他の宗派との資金力の違いは一目瞭然でしょう。

今では世界100カ国にイグレシアの支部があると言われています。

もちろん日本にもあり私も訪れたことがあるのですが、その多くは教会ではなく建物を丸ごと、あるいは1室借りて礼拝所に仕立て上げている、という感じでした。

選挙時の組織票

イグレシアニクリストの教徒は、国政・市政を問わずフィリピン国内で選挙がある際には教会の決めた候補者に投票するよう義務付けられています。

教会が何を根拠に投票先を決めているのかは不明ですが、まず第一にイグレシアに好意的であるという点は重要視されるようです。

選挙が近くなれば候補者は非イグレシア教徒であってもイグレシアの集まりには積極的に顔を出してアピールをします。

たかが人口の3%とは言え、イグレシアの結束力は甚大です。

教徒は教会の指名した候補者にほぼ間違いなく投票をしますし、投票率も他宗教の人間より高いため、イグレシアの支援を得られるかどうかが選挙の結果を大きく左右します。

イグレシアニクリストのフィリピンでの立ち位置

一時期イグレシアがフィリピン国内において糾弾された歴史もあるようですが、少なくとも現代においてはイグレシア教徒であるからと迫害を受けることはありません。

それでも一般のフィリピン人の全てがイグレシアに対して好意的であるというわけではありません。

私の友人は「イグレシア教徒は洗脳されている」と言っていました。

このフィリピン発祥の宗教が「神に認められた唯一の教会だ」と主張する彼らの教義を耳にすれば無理からぬことでしょう。

イグレシアに対して批判的な発言をした政治家や芸能人が、イグレシアからボイコットされたというケースもあります。

2013年、フィリピンが台風「ヨランダ」によって甚大な被害を受けた際には「イグレシアは信徒以外の人間を教会に入れず見殺しにした」という噂も流れました。

イグレシアの側は「他教徒の人間も受け入れた」と主張しておりどちらが真実かはわかりませんが、いまだにそういった対立構造はあるようです。

まとめ

以上フィリピン発祥の宗教『イグレシア・二・クリスト』についてご紹介しました。

フィリピンを訪れれば本当に至る所にイグレシアの教会を見るので、どんな宗教なのか疑問に思っていた方も多いのではないでしょうか。

この記事を読んでカルトな印象を持った方もいるかもしれませんが、実際の教徒たちは善人だったり悪人だったりが適度に入り混じった一般のフィリピン人と大差ありません。

あまり身構えることなく接してあげましょう。

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